緑内障とは、眼圧(眼内液の圧力)上昇とそれによる視神経障害を特徴とする病気です。
※眼内液とは房水とも言われ、房水の役割は角膜・水晶体に栄養供給することと、眼内の圧力を維持することです。眼の正常な形を維持するために必要不可欠です。
※犬の正常眼圧は大体15~20mmHgの範囲内です。
一度緑内障によって視神経が障害されて失明に至った眼では、視覚を回復することはできないため、緑内障の診察では早期発見・早期治療が必要不可欠です。
Q.どうして眼圧は上昇してしまうのでしょうか?
A. まず房水の産生・流れ・流出について理解しましょう。下記の図をご覧下さい。
房水はまず、①毛様体で産生され⇒②瞳孔を通り前眼房へ⇒③最後隅角へ流出します。
緑内障の眼では、上記の房水流出経路に何らかの原因があり障害が出ております。
A. 日本での好発犬種は?
Q.
第1位 → 柴犬
第2位 → シーズー
第3位 → コッカースパニエル
第4位 → チワワ
第5位 → ビーグル
☆緑内障の分類
①原発性緑内障・・・他の眼疾患がなく眼圧上昇、多くの犬種で遺伝性であり両眼性です。
✿原発解放隅角緑内障
✿原発狭/閉塞隅角緑内障→犬で最も多く見られる型
②続発緑内障 ・・・先行・合併する眼疾患により、房水流出路が物理的に障害され眼圧上昇します。
水晶体脱臼・膨張白内障・ブドウ膜炎、眼内腫瘍、網膜剥離などが原因として挙げられます。
③先天緑内障 ・・・房水流出路の著しい形成異常により、生後すぐに眼圧上昇します。
☆緑内障の症状
急性緑内障を発症した2眼
※上記写真の症例はどちらも眼圧60mmHg以上、視覚は眼圧を下げると回復
☆緑内障の診断を行うためには
① 検眼鏡検査
② 眼圧検査
③ 隅角検査
④ 超音波検査
→①②③が基本的な診断のための検査で、④眼内の構造物の測定(眼球のサイズなど)、観察を行う場合に実施します。
※当院では③の隅角検査が現時点で実施できません。今後導入予定です。
正常な眼圧の隅角
急性緑内障を発症した隅角
※隅角は赤点線枠内の赤線です。正常眼圧に比べ緑内障眼の隅角はとても幅が狭くなっていることがわかります。
☆治療法
内科治療
① 房水産生抑制 ・・・点眼薬、内服薬
② 房水流出促進 ・・・点眼薬
③ 硝子体容積減少(短期的) ・・・点滴
外科治療
① 房水排出促進・・・前房シャント術
② 房水産生抑制・・・毛様体光凝固術、毛様体冷凍凝固術
③ 痛みからの解放・・・眼球摘出術、硝子体内ゲンタマイシン注入、強膜内義眼
外科治療は現在①の前房シャント術が推奨されます。前房シャント術は緑内障を発症した眼に対してできる限り早めのタイミングで行うことで、長期的に視覚を温存することが可能となります。長期的に点眼治療を行ってきた眼では手術適応とならないこともあります。
当院では現在③の痛みからの解放を行うための外科処置のみ対応可能です。
③の処置は視覚が喪失していて、眼圧のコントロールができない症例で適応となります。
当院からのアドバイス
緑内障は初期の段階で飼い主様が発見することができれば、視覚を長期間保つことができる可能性が高い病気です。
しかし、中々症状がはっきりしていないと異常なことに気づきにくく、動物病院に受診した時には中期~後期に進行していることが多いです。
そのため、当院では年1回以上の眼の健康診断をおすすめ致します。
好発犬種である柴犬・コッカースパニエル・シーズーなどは特に必要だと思います。
気になる症状がありましたら様子をみず、動物病院を受診して下さい。