水晶体脱臼・亜脱臼
水晶体を支えているチン小帯という線維が完全離断または部分離断・欠損することで、水晶体が硝子体窩から偏位した状態を水晶体脱臼または亜脱臼と呼びます。
目の構造
正常
脱臼・亜脱臼
⇒水晶体
水晶体前方脱臼・・・水晶体が前房内に大きく偏位したもの
水晶体後方脱臼・・・水晶体が硝子体内に大きく偏位したもの
水晶体亜脱臼 ・・・部分的にチン小帯が離断または変性し、偏位量が少ないもの
分類
☆原発性・・・3~6歳で見られることが多い
※テリア犬種、シャーペイで犬種素因あり
※テリア犬種は平均4.5歳、シャーペイは平均4.9歳であると報告あり。
☆遺伝性
ボーダーコリー スコティッシュテリア
ケアンテリア ウエストハイランド・ホワイトテリア
ジャックラッセルテリア チベタンテリア
レイクランドテリア ワイアーヘアード・フォックステリア
マンチェスターテリア
ミニチュアブルテリア
ノーフォークテリア
☆犬種素因(この病気にかかりやすい体質)あり
オーストラリアン・コリー ミニチュアシュナウザー
バセットハウンド ノルウェージャン・エルクハウンド
ビーグル スパニエル種
チワワ ウェルシュコーギー・ペンブローグ
ジャーマンシェパード ウェルシュテリア
グレイハウンド トイプードル
ミニチュアプードル トイテリア
☆続発性・・・慢性期の緑内障や眼球拡大、ぶどう膜炎などの影響で発生
その他・・・他の眼疾患に伴わない(テリア犬種以外)
発症メカニズムは不確定で、毛様小帯や前部硝子体、硝子体基部における加齢性変性
によるといわれている。
水晶体脱臼による合併症
① 続発性緑内障
② 角膜浮腫
③ 続発性ぶどう膜炎
続発性緑内障の発症率は・・・・前方脱臼73%、後方脱臼38%、亜脱臼43%で発生するという報告アリ!
上記のような合併症が起こることがありますので、飼い主様、または動物病院にて水晶体(亜)脱臼が確認された場合は、眼の状態により積極的に治療をおすすめする場合がございます。わんちゃんの眼で気になることがある飼い主様は、一度当院までご相談して頂ければと思います。
水晶体脱臼の治療
基本的には水晶体摘出を行う。
ただし、水晶体を摘出することができる病院が限られていることや(当院では現時点で実施不可)、
どこに水晶体が偏位しているかでも治療の選択が変わります。
内科治療で対応することもあります。
症例報告
(症例1)ウェルシュコーギー・カーディガン
右眼:水晶体前方脱臼、緑内障、視覚なし
左眼:水晶体亜脱臼、視覚あり
右眼
高眼圧と水晶体が角膜後面に接しているため角膜は混濁し、角膜表面に血管新生あり。
虹彩は後房圧の上昇により、膨隆している。
左眼(散瞳処置前)
(散瞳処置後)
赤枠の中を見比べて下さい。散瞳処置後は水晶体と虹彩の間に隙間があります。水晶体が鼻側に偏位しています。
(症例2)トイプードル
両眼:水晶体完全脱臼、眼圧正常、視覚なし
右眼
この写真を撮影した時は、顔がやや下向きだったので、水晶体が前方に偏位しています。
顔の向きで水晶体も前後の移動をしています。
幸いなことに、この症例は両眼とも眼圧は正常です。
左眼
左眼の水晶体は後方腹側に偏位。